なぜ、いまこそ感動経営が必要なのか?
株式会社KOEI
代表取締役社長 船橋吾一
感動が感動を生み、人も会社も強くなる。
その輪が広がることで、日本の未来もさらに輝くと思うんです。
「建設設備業」とは何でしょうか。いわゆる建設業とは、建物を建てることです。では設備業は? わかりやすい例で言えば、水回りです。蛇口をひねれば水が出る。それを受ける流し台があって、使われた水を排出する管があります。このような「設備」は、ふだんはあまり気にせず使っているものかもしれませんが、なくなってしまったら、とても困りますよね。また設備は、蛇口のように、見える場所に設置されているものばかりではありません。見えない部分にあるものもたくさんあります。それでも、住宅を構成するための重要な一部分を担っているのです。
建築を人間の体で表現するならば、建設業は姿かたちを司る、骨格や皮膚、筋肉です。対して建設設備業は、内臓ですね。飲み込んだ食べ物を胃に届け、消化して、腸で栄養を吸収し、排出する。外からでは見えないけれど、人間を構成する大事な機能。これこそが、建設設備業だと考えています。
2012年、父に代わって社長に就任しました。社長として会社を引っ張っていかねばならないという思いを胸に走り続けた結果、就任当時と比較して売上は約2倍になりました。東北エリアの建設設備業界において、地元企業としてはナンバーワンの立ち位置にいると自負しています。しかしこれから先の10年は、また違ったビジョンを描いています。
私の理想は、会社を自走する組織に成長させること。そのうえで、最前線で働く社員の考えに沿った経営をしていくことです。社長1人の頭で考えることだけで、この厳しい世の中を渡っていけるとは微塵も思っていません。最前線でお客様と交渉する営業職、現場で手や足を動かす施工管理職…彼らの頭脳や経験を共有してもらい、また、彼ら自らが経営方針を立て実行に移していく。社長である私は、後ろで彼らのサポートをする。そうすれば、これまでの数倍のスピードで我が社は成長できると確信しています。
よく学生さんから、「どんな人材を求めていますか」と聞かれます。そのたびに私が答えるのは、感動を素直に受け取れる人、です。もちろんスキルや知識など、そういったものはあれば越したことはありません。でも、それが求めることのすべてではないんです。何かうれしいこと、喜ばしいことがあった時に斜に構えることなく、感動を体で表現する。具体的には、涙を流したり、ものすごく大きな声で笑ったり。男性同士であれば、抱き合って喜びを分かち合おうとするくらい。そういう純粋さを持っていて、仲間と思いや感動を共有しようとする人。私たちはそういう人を求めていますし、そういう要素こそがこの会社を作ってきたのだと思います。
そもそも私がなぜ「感動」を大切にしているのか。思い起こせば父が倒れ予期せず社長に就任することになった年に、「自分の思いを一つの言葉に表したい」と考えた時にふと頭に浮かんだ言葉が感動だったことに始まります。
生まれてから社長になるまでの間、常に傍らに感動がありました。幼少の頃は両親や祖父母、先生方が、私が落ち込んでいれば声をかけてくれ、スキンシップをして、遊びに連れて行ってくれたものです。同じように、中学生、高校生、大学生になっても身近な人たちの協力や優しさがあって、人生のあらゆる壁を乗り越えてこれました。やがて社会人になり、人並みに荒波に揉まれながらも、今こうして社長になりました。ここまで私を成長させてくれたのは、いろいろな方々の力や支えのおかげです。これこそが、私にとって感動そのものでした。
感動を受け取り、その感動をまた誰かに伝えたい。そしてそれを受け取ってくれた人がまた違う誰かに感動を伝えて分かち合う…この連鎖こそが何よりの感動であり、この感動を会社の中にも広めていきたい。感動によって、より良い会社として歩んでいきたい。それが、私たちの考える感動経営なのです。